「満席の売上」ではなく「開業半年の売上」で家賃を割り、10〜12%に収まるかを見てください。
セット面数を増やしても、家賃が先に上がって席が埋まらなければ、手元に残るお金はむしろ減ります。
物件探しをしていると、「駅前の1階、人通りが多い」物件に目が止まりますよね。
でも家賃を見ると、予算より3万円高い。
「集客できるから大丈夫」と思うか、「やっぱり少し奥の2階にしよう」と思うか。ここで迷う方がとても多いです。
私は杉並区で美容サロン専門の税理士事務所をやっています。
日本政策金融公庫の担当窓口と連携しながら、申請前の段階から創業融資をサポートしています。
今日は「家賃はセット面数に対していくらまで払えるか」を、数字で決める方法を書きます。
サロンの家賃は売上の何%が目安か
美容室やネイルサロンで、よく言われる家賃比率の目安は売上の10%前後です。
高くても15%程度までに収めたい、と考える方が多いと思います。
ここで気をつけたいのは、分母に使う売上です。
物件の資料や不動産会社の話では、「満席になれば売上は◯◯万円」という前提で家賃を考えがちです。
でも現実には、開業から半年は、予約が埋まらない日のほうが多いものです。
私が相談で使う分母は、満席の5〜6割の売上です。
この水準で家賃比率が10〜12%に収まっていれば、立ち上がりの時期でも資金繰りが保てます。
3面サロンの家賃を数字で決める(試算)
セット面3つの美容室を例に、売上を組み立てます。
前提は、客単価7,000円、1面あたり1日3人、月25日営業です。金額は考え方をつかむための試算です。
- 満席の売上:3面 × 3人 × 25日 × 7,000円 = 月157.5万円
- 満席の6割:月94.5万円
- 満席の5割:月78.75万円
家賃比率10%で考えると、満席の6割なら家賃は約9.5万円。5割なら約7.9万円です。
つまり、立ち上がりの時期に無理なく払える家賃は、8万〜10万円あたりが上限になります。
そこで、家賃8万円の物件Aと、家賃14万円の物件Bを比べます。
どちらも満席の5割(月78.75万円)で動いている月を想定します。
- 材料費(売上の10%):約7.9万円
- 光熱費・通信費:5万円
- 広告費:4万円
- 雑費:3万円
- 借入の返済(800万円を10年・年3%の概算):約7.7万円
ここまでの合計が約27.6万円。売上から引くと、家賃を払う前に約51万円が残ります。
物件A(家賃8万円):家賃を払うと約43万円。家賃比率は10.2%。
物件B(家賃14万円):家賃を払うと約37万円。家賃比率は17.8%。
ここから生活費を30万円出すと、Aは約13万円、Bは約7万円残ります。
Bは、家賃差の月6万円ぶん、手元が半分近くまで減りました。
しかもこれは売上が満席の5割で動いている月の話です。予約が少ない月は、Bのほうが先に苦しくなります。
セット面数を増やせば家賃は払えるのか
「面数を増やして売上を上げれば、家賃は吸収できる」。そう考える方もいます。
半分は正しく、半分は危うい考え方です。
面数が増えれば、満席の売上は増えます。
ただ、スタッフが自分1人なら、増やした面は誰が回すのでしょうか。
面が空いたままだと、広い分だけ家賃が重くなります。
目安として、自分1人で立つなら2面まで、スタッフを1人入れるなら3面くらいが、最初の物件選びでは現実的です。
坪数が小さい物件で、2面から始めて、軌道に乗ったら増やせる余地を残す。
こうした設計のほうが、立ち上がりの家賃負担を軽くできます。
売上を面数から組み立てる計算は 美容室の売上予測の立て方 に詳しく書いています。
駅前の高い家賃と、少し奥の安い家賃をどう比べるか
家賃が高い駅前は、通りがかりの新規客が見込めます。
一方で、美容室・ネイル・エステは、予約制で口コミやSNSからの来店が中心です。
2階や少し奥の物件でも、予約が入る業態は多くあります。
大事なのは、家賃の差で何人の集客を買っているのかを数字にすることです。
先ほどの例で、家賃が月6万円高くなるなら、客単価7,000円で月に約9人ぶんです。
駅前に出るだけで、毎月9人以上の新規客が増えるか。この問いに自信を持って「はい」と言えるなら、高い家賃にも意味があります。
「たぶん増える」では、計画書を通す根拠としても弱くなります。
杉並・中野・吉祥寺それぞれの商圏の特徴は 杉並区で美容室・サロン開業|創業融資と開業の進め方 も参考にしてください。
家賃の「表に出ない部分」も合計して比べる
求人サイトの月給と同じで、物件も表示の家賃だけでは比べられません。
実際に毎月払うのは、家賃に共益費、管理費を足した金額です。
さらに、契約時には保証金(家賃の6〜10か月分になることもあります)、礼金、仲介手数料がかかり、2年ごとの更新料が出る物件もあります。
たとえば家賃8万円で保証金が8か月なら、契約時に64万円が現金で出ていきます。
この保証金は開業資金に入れる必要があり、借入額にもはね返ります。
フリーレント(一定期間の家賃無料)が付く物件なら、内装工事の期間の負担が軽くなります。
物件を比べるときは、月々の合計と契約時の合計を、2本立てで並べてください。
創業融資の審査で、家賃はどう見られるか
創業計画書には「家賃」の欄があり、売上計画と並べて見られます。
売上に対して家賃が極端に重いと、「この売上は本当に達成できるのか」と細かく聞かれやすくなります。
逆に、家賃比率が10〜12%に収まっていて、その売上の根拠が面数と客単価で説明できれば、計画の無理のなさが伝わります。
また、物件の契約は融資の結果が出る前に結んでしまわないことが大切です。
順番は 創業融資と物件契約のタイミング に書いたとおりです。
物件を決める前の家賃チェック3ステップ
- 満席の売上を、面数×1日の人数×営業日数×客単価で出す
- その5〜6割を、開業半年の売上として置く
- 家賃(共益費込み)がその10〜12%に収まるか確認する
共益費、更新料、保証金の償却も忘れずに。
「家賃8万円」でも、共益費が1万円付けば、実際の負担は9万円です。
よくある質問
- Q. 美容室の家賃は売上の何%までが目安ですか
- A. 売上の10%前後が目安で、高くても15%程度までと考える方が多いです。分母は満席の売上ではなく、満席の5〜6割で見ると安全です。たとえば3面・客単価7,000円なら、立ち上がりの家賃は8万〜10万円が上限の目安になります。
- Q. セット面数は家賃に合わせて決めるべきですか
- A. 家賃と、実際に席を回せる人数の両方で決めます。自分1人なら2面、スタッフを1人入れるなら3面くらいが現実的です。席が空いたままだと、広さのぶん家賃だけが重くなります。
- Q. 家賃が高い駅前物件は創業融資に不利ですか
- A. 家賃そのもので不利になるわけではありません。ただ、売上に対して家賃比率が重いと、売上計画の根拠を詳しく聞かれます。面数・客単価・集客の見込みで、家賃を払える理由を説明できるようにしておきましょう。
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