・売上予測は「セット面 × 1日の回転 × 客単価 × 稼働日数」の4つに分解して立てます。
・一番の落とし穴は来店サイクル。お客さまは平均で2.9ヶ月に1回しか来ません。固定客100人でも、月の来店は約35人です。
・計画書で見られているのは金額の大きさではなく、その数字にたどり着いた計算式です。
創業計画書の「事業の見通し」欄。月商のところに、120万円と書いてある。
その根拠を伺うと「今のお店で自分が出している売上がそのくらいなので」と返ってくる。これが一番よくあるパターンです。
でも、その120万円はスタッフが数人いて、受付があって、既存の看板と予約サイトの掲載があるお店で出している数字です。開業初月のあなたのお店とは、条件が違います。
こんにちは。杉並区で美容業専門の税理士事務所をやっている清水智佳子です。この記事では、美容室・サロンの売上予測を、セット面と回転と客単価から組み立てる手順をお話しします。数字が苦手でも大丈夫です。使うのはかけ算と割り算だけです。
美容室の売上予測は4つに分解して立てる
売上予測の式は、これだけです。
月商 = セット面数 × 1日あたりの回転数 × 客単価 × 月の営業日数 × 稼働率
公庫の担当者が見ているのは、この式のどこに何を入れたかです。「たぶん120万円くらい」では説明になりませんが、「セット面2台、1日4.5人、単価8,000円、月25日営業」と分解すれば、それぞれの数字が妥当かどうかを一緒に検討できます。
逆に言うと、分解さえしてあれば、多少の見込み違いは説明可能な範囲におさまります。計画書の書き方全体は美容室の創業計画書の書き方(全8欄の記入例)にまとめました。ここでは売上の欄だけを深く掘ります。
客単価をどう置くか
まず単価から決めます。ここは業界データがあります。
ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期」によると、美容室の1回あたり利用金額は女性7,686円、男性4,853円。前年比で女性が0.2%増、男性が0.5%減と、ほぼ横ばいです(株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー、2026年7月公表)。
この数字は全国平均です。カット専門なら下がりますし、カラーやトリートメントを組み合わせる客層なら上がります。ご自身の想定メニューと客層を当てはめて、平均より上に置くなら「なぜ上に置けるのか」を一行添えてください。
ここで一つ、注意しておきたいことがあります。同じ調査で、1回あたりの滞在時間は女性が平均81分、前年から6分短くなりました。付帯メニューの利用率も下がっています。つまりお客さまは、メニューを絞り始めています。「開業したら店販とトリートメントで単価1万2,000円」という前提は、いま逆風の中にあります。
1日の回転数は施術時間から逆算する
次に回転です。ここは希望ではなく、時間で計算します。
女性の平均滞在時間が81分。カウンセリング、片付け、次の準備を入れると、1人あたり実質90分から100分です。1人で営業するサロンなら、この間、他のお客さまは基本的に受けられません。
10時から19時までの9時間営業として、休憩1時間を引くと8時間。100分で割ると4.8人。これが理論上の上限です。
セット面が2台あっても、施術者が1人なら、この上限は変わりません。売上を決めるのはセット面の数ではなく、手の数です。セット面2台は、待ち時間を使ってカラー放置中のお客さまを並行させるための余白であって、単純に2倍にはなりません。1人営業でセット面2台を活かすなら、1日5.5人から6人あたりが現実的な天井です。
稼働率という、一番ごまかしやすい数字
そして、ここが計画書で最も甘くなるところです。
1日4.8人が上限だとして、毎日その4.8人が入るわけではありません。平日の午前中は空きます。雨の日も空きます。開業初月なら、なおさらです。
稼働率60%なら1日2.9人。単価8,000円、月25日で月商58万円。80%まで上げて1日3.8人なら、月商76万円。100%で埋まって月商96万円です。
1人サロンの月商の天井は、だいたいこのあたりに来ます。ここを知らずに「月商150万円」と書いてしまうと、逆算したときに1日7.8人という数字になり、施術時間と合わなくなります。担当者は、この矛盾に気づきます。
私がお勧めしているのは、初月40%、3ヶ月目60%、6ヶ月目75%、というように段階を書いてしまうことです。最初から満席の計画より、立ち上がりを織り込んだ計画のほうが、はるかに信用されます。
来店サイクル2.9ヶ月という現実
もう一つ、多くの方が見落とす数字があります。
同じ美容センサス2026年上期で、年間利用回数は女性4.18回、男性5.05回。3年連続で減っています。
女性4.18回ということは、来店サイクルは12ヶ月 ÷ 4.18 = 約2.9ヶ月。3ヶ月に1回です。
これが何を意味するか。固定客が100人いても、その100人が毎月来るわけではありません。100人 ÷ 2.9ヶ月で、月の来店はおよそ35人です。
逆算しましょう。月に80人の来店が必要なら、必要な固定客数は 80 × 2.9 = 約232人。今のお店であなたを指名しているお客さまが何人いて、そのうち何人がついてきてくれそうか。ここに232という数字を並べると、開業初年度に何が足りないかが一目で分かります。
足りない分は新規で埋めるしかありません。予約サイトの掲載料や広告費を計画に入れる根拠は、ここにあります。
計画書に書いてはいけない売上予測
最後に、書かないほうがいいものを挙げます。
根拠のない目標値。「リピート率90%を目指します」。目指すのは自由ですが、業界の継続率はおおむね7割です。90%と書いた瞬間、他の数字も疑われます。
右肩上がり一直線。初月から毎月10%ずつ伸びて、1年後に月商200万円。1人営業なら物理的に不可能な数字に到達します。
今の勤務先の売上をそのまま転記。先ほど書いたとおり、条件が違います。使うなら「現在の指名客数」と「そのうち移動可能な人数の見込み」に変換してください。
単価だけ上げて帳尻を合わせる。客数の見通しが立たないと単価を上げたくなりますが、滞在時間もメニュー利用も縮んでいる局面です。上げるなら理由を添えます。
よくある質問
- Q. 美容室の売上予測はどうやって立てますか。
- A. セット面数 × 1日の回転数 × 客単価 × 営業日数 × 稼働率に分解します。1人営業でセット面2台なら、1日5.5人前後が現実的な上限。単価8,000円・月25日・稼働率60%で月商およそ66万円が出発点です。
- Q. 1人サロンの月商はどのくらいが限界ですか。
- A. 施術時間から逆算すると1日4.8人程度が上限です。単価8,000円・月25日・満席で月商96万円前後。ここを超える計画を書くなら、単価を上げるか、施術時間を短くするか、手を増やす根拠が要ります。
- Q. 固定客が何人いれば食べていけますか。
- A. 来店サイクルが平均2.9ヶ月なので、月80人の来店には約232人の固定客が必要です。今の指名客数と比べて足りない分を、新規集客でどう埋めるかまで書くと計画になります。
- Q. 客単価は平均より高く設定してもいいですか。
- A. 構いません。ただし理由を一行添えてください。メニュー構成、立地、客層のどれで説明するかです。根拠なく平均より高い数字を置くと、計画全体の信頼度が下がります。
杉並・中野・吉祥寺でサロン開業予定の方へ
当事務所は杉並区。日本政策金融公庫の担当窓口と連携し、創業融資を申請前の段階からサポートしています。オンラインで全国からのご相談も可能です。
売上の見通しが立つと、必要な開業資金と自己資金の額も決まります。美容室開業の自己資金はいくら必要かと独立開業資金の内訳を合わせて読むと、全体の数字がつながります。エリアごとの家賃と競合は杉並区でサロンを開業する場合の全体像に書きました。
数字を並べてみて手が止まったら、そこが相談のタイミングです。サービスの詳細はこちら、私のプロフィールはこちら。
→ 無料相談を申し込む(初回60分・オンライン対応)
AIの質問に話し言葉で答えていくだけで、公庫様式の創業計画書Excelがダウンロードできます。セット面数と客単価を入れると、売上の見通し欄まで自動で埋まります。
ご登録いただくと、特典PDF『美容サロンの創業融資 完全ガイド』(全34ページ)もお受け取りいただけます。
→ AI創業計画書をつくってみる

