居抜きサロンとスケルトン開業はどっちが得?初期費用と創業融資の見え方を美容サロン専門税理士が比較

開業準備
居抜きとスケルトン、どちらが得かは「初期費用の安さ」だけでは決まりません。
居抜きは内装費を抑えやすい反面、造作譲渡料と、前のお店の設備がそのまま使えるかという不確かさが付いてきます。
創業融資では、どちらでも見積書と契約書で金額の根拠を示せるかが見られます。契約の前に数字を並べて比べましょう。

物件を探していて、「居抜き可」の文字を見つけると心が動きますよね。
シャンプー台も椅子もミラーも残っている。内装を一から作るより安く済みそう。
でも、そのまま契約して、あとで「思ったより高くついた」と相談に来られる方も少なくありません。

私は杉並区で美容サロン専門の税理士事務所をやっています。
日本政策金融公庫の担当窓口と連携しながら、申請前の段階から創業融資をサポートしています。
今日は居抜きとスケルトンを、お金の面から同じ土俵で比べます。

居抜きサロンとスケルトン開業の違いは「何にお金を払うか」

まず言葉をそろえます。

居抜きは、前のテナントが使っていた内装や設備が残った状態で借りる物件です。
スケルトンは、壁・床・天井が躯体のむき出しの状態で、内装をゼロから作る物件です。

どちらにも、お金のかかる場所があります。

居抜きでは、前のテナントに「造作譲渡料」を払って内装や設備を引き継ぐことが多いです。
スケルトンでは、内装工事費がまるごとかかります。
つまり、居抜きは「引き継ぐ権利」にお金を払い、スケルトンは「作る工事」にお金を払う。ここが出発点です。

居抜きとスケルトンの初期費用を数字で比べる

ここでは、分かりやすく3面のサロン(セット面3つ、約12坪)を例にします。
金額はあくまで考え方を見るための試算で、実際の金額は物件と見積りで大きく変わります。

スケルトンの場合(試算)

  • 内装工事(給排水・電気・空調・造作):坪30万〜50万円として、12坪で360万〜600万円
  • 美容椅子3台・シャンプー台2台・ミラー・什器:200万〜300万円
  • 保証金・礼金・仲介手数料(家賃10万円の6か月分前後):60万円前後

合計で、おおよそ620万〜960万円です。

居抜きの場合(試算)

  • 造作譲渡料(前テナントへ):150万〜300万円
  • 残った設備の入れ替え・補修・看板の変更:50万〜150万円
  • 保証金・礼金・仲介手数料:60万円前後

合計で、おおよそ260万〜510万円です。

数字だけ見ると、居抜きのほうが300万円ほど安く見えます。
ただ、この差は「前のお店の設備がそのまま使えた場合」の話です。ここに落とし穴があります。

居抜き物件で後から高くつく3つのポイント

1. 設備が古くて、結局入れ替えになる

シャンプー台や給排水の配管は、見た目がきれいでも中が傷んでいることがあります。
給湯器や空調の寿命は10年前後が目安なので、「前の店が5年やっていた」物件だと、開業後すぐに交換の時期が来ることも。
たとえば給湯器の交換と配管の補修で、60万〜100万円かかったという話はよくあります。
造作譲渡料を払ったうえで、設備まで入れ替えると、スケルトンとの差はほとんどなくなってしまいます。

2. 残された設備がリース中だった

これはとても大事です。
前のテナントが、美容椅子やシャンプー台をリースで入れていた場合、その設備の所有者はリース会社です。
造作譲渡契約で「引き継ぐ」と書いてあっても、リース契約の名義変更や残債の扱いが整理されていないと、あとで請求が来ることがあります。
契約の前に、「何が前テナントの所有物で、何がリース品か」を一覧で確認してください。

3. 退去時の原状回復の範囲があいまい

居抜きで借りると、将来あなたが退去するときの原状回復の範囲が複雑になりがちです。
「引き継いだ内装は現状のままで返せばよい」のか、「スケルトンに戻す」のかで、数十万〜数百万円の差が出ます。
賃貸借契約書の原状回復の条項は、必ず契約前に読んで、不明点は書面で確認してください。

スケルトンで開業するメリットと気をつけること

スケルトンは、初期費用が高くなる分、サロンのコンセプトを思いどおりに作れます。
動線を考えて、セット面の位置、シャンプー台の位置、レジ前のスペースを最初から設計できる。
設備がすべて新品なので、数年間は修理の心配が少ないのも安心材料です。

一方で、工事期間が長く、1.5〜2か月かかることもあります。
その間は家賃だけが出ていきます(フリーレント期間があるかどうかは物件次第です)。
家賃10万円で2か月なら、売上ゼロで20万円。この「工事期間中の家賃」も、開業資金の見積りに入れておいてください。

創業融資では、居抜きとスケルトンはどう見られるか

公庫の創業計画書で、「どちらが有利」ということはありません。
見られるのは、設備資金の金額に根拠があるかどうかです。

スケルトンなら、内装工事の見積書と、設備の見積書を出します。
居抜きなら、造作譲渡契約書(案でも可)と、引き継ぐ設備の一覧、入れ替え分の見積書を出します。

気をつけたいのは、居抜きの造作譲渡料です。
この金額が相場とかけ離れていると、「根拠は何ですか」と聞かれます。
前テナントが払った内装工事費、使用年数、現在の状態を説明できるようにしておくと、答えやすくなります。

また、契約のタイミングも大切です。
造作譲渡契約や賃貸借契約を先に結んでしまうと、融資が通らなかったときに戻れなくなります。
順番は 創業融資と物件契約のタイミング に書いたとおりです。

居抜きかスケルトンか、決める前の確認リスト

私が相談を受けたとき、最初に確認するのは次の5つです。

  1. 造作譲渡料の金額と、含まれるものの一覧(リース品は除く)
  2. 給排水・電気容量・空調が、美容室として使える状態か
  3. 賃貸借契約の原状回復の範囲(スケルトン戻しか、現状返しか)
  4. 入れ替え・補修が必要な設備の見積り
  5. 保健所の検査に通る構造・設備になっているか

この5つを埋めたうえで、居抜きとスケルトンの総額を並べると、判断がかなりラクになります。
迷ったら、見積りは2社以上から取ってください。
自己資金との兼ね合いは 美容室開業の自己資金の相場 に、売上の組み立ては 美容室の売上予測の立て方 に書いています。

よくある質問

Q. 美容室は居抜きとスケルトンのどちらで開業するのが得ですか
A. 一概には言えません。12坪・3面の試算では、居抜きが260万〜510万円、スケルトンが620万〜960万円と、居抜きが安く見えます。ただし設備の入れ替えや原状回復で差が縮むことがあるので、総額で比べてください。
Q. 居抜き物件の造作譲渡料は創業融資の対象になりますか
A. 設備資金の一部として計画書に入れることは多いです。ただし金額の根拠を問われるので、造作譲渡契約書(案を含む)と引き継ぐ設備の一覧を用意しておくと説明しやすくなります。最終的な判断は公庫が行います。
Q. 居抜きで気をつけるリース品とは何ですか
A. 前のテナントがリースで入れていた美容椅子やシャンプー台などです。所有者はリース会社なので、引き継ぐ前に名義変更や残債の扱いを書面で確認してください。整理がないと、あとで請求が来ることがあります。

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