シェアサロンと店舗開業はどっちが得か|月の固定費と損益分岐を数字で比べる(美容サロン専門税理士が解説)

シェアサロンと店舗開業はどっちが得か 開業準備
シェアサロンと店舗開業は、月の固定費で約13万円の差があります。同じ材料費率なら、店舗は月に約15万円の売上を上乗せして、はじめて追いつく計算です。
初期費用も、シェアサロンは数十万円、2席の店舗は700万円前後が一例。「どっちが得か」は、何席・何人で売上を増やす計画かで決まります。
迷うなら、シェアサロンで売上台帳を作ってから店舗へ進む順番が、融資の面でも無理がありません。

「シェアサロンで始めるか、思い切って店舗を借りるか」
独立を考える美容師さん、ネイリストさん、アイリストさんが、最後にいちばん迷うところです。
どちらが正解かは、人によって変わります。ただ、迷っている理由の多くは、毎月のお金の差が見えていないことです。

私は杉並区で美容サロン専門の税理士事務所をやっています。
今日は、シェアサロンと店舗開業を、固定費・初期費用・損益分岐の3つの数字で比べます。数字はすべて説明用の例なので、ご自身の条件に置き換えて読んでください。

シェアサロンと店舗開業の料金・初期費用を比べる

まず、それぞれのお金のかかり方を整理します。
シェアサロンの料金体系は、大きく3つに分かれます。

  • 時間制:1時間あたり1,000〜3,000円ほどが目安。使った分だけ払うので、週2〜3日から試せます。
  • 月額制:月10万〜30万円ほどが目安。利用できる時間や曜日の上限は、サロンごとに違います。
  • 月額+歩合:月1〜5万円ほどに加えて、売上の20〜40%がかかるタイプ。

この記事では、月額制で月15万円のシェアサロンを例にします。

初期費用はこう変わります。

シェアサロン(月額15万円)
道具の準備・予約システム・賠償責任保険・告知 約30万円
店舗(2席のサロン)
物件取得費100万円+内装250万円+設備150万円+広告30万円+運転資金150万円 約680万円

初期費用の差は、約650万円。
この金額を自己資金だけでまかなえる方は多くありません。店舗開業は、多くの場合、創業融資を前提に考えることになります。
内訳の考え方は 面貸し・業務委託から独立する時のお金 と 美容室の独立開業資金 に詳しく書いています。

シェアサロンと店舗開業、毎月の固定費はどれだけ違うか

次に、毎月出ていくお金です。

シェアサロン:固定費 月15万円
利用料15万円(光熱費・設備・シャンプー台は込み)

店舗(2席):固定費 月約28万円
家賃(共益費込み)11万円/水道光熱費・通信費3万円/広告・集客・予約システム3万円/保険・消耗品2万円/借入の返済9万円前後

差は月13万円です。
店舗の固定費は、売上が上がっても下がっても、毎月同じだけ出ていきます。ここが、シェアサロンとの一番の違いです。

どっちが得か|月商40万・80万・100万円で比べる

材料費率を売上の12%として、1人で施術する前提で、手元に残る額(事業の利益)を計算します。

月商40万円の場合
シェアサロン 40-15-4.8=約20.2万円
店舗 40-28-4.8=約7.2万円

月商80万円の場合
シェアサロン 80-15-9.6=約55.4万円
店舗 80-28-9.6=約42.4万円

月商100万円の場合
シェアサロン 100-15-12=約73万円
店舗 100-28-12=約60万円

同じ売上なら、シェアサロンのほうが毎月13万円ほど手元に残ります。
つまり、1人で施術する範囲では、シェアサロンのほうが得です。
店舗が追いつくには、固定費の差13万円を取り返す売上の上乗せが必要になります。

計算はこうです。
13万円÷(1-0.12)=約14.8万円。
月に約15万円の売上を、シェアサロンではできない形で上乗せできるか。これが、店舗に進む判断の最初の物差しです。

店舗開業が得になるのは「売上を増やす形」が決まっている人

店舗のほうが得になるのは、シェアサロンでは作れない売上の増え方を、具体的に描けるときです。

  • 席数を増やして、スタッフや業務委託を入れる:自分1人の時間に売上の上限があるのは、シェアサロンも店舗も同じ。2席目を埋められれば、固定費の差は一気に吸収できます。
  • 営業時間の自由度を売上に変える:夜の時間帯や早朝を使いたい、1日の予約枠を詰めたい、といった場合は、自分の店のほうが組み立てやすくなります。
  • 店舗販売・回数券・物販を組み込む:商品を置く、世界観をつくる、といった客単価の工夫は、自分の空間でこそ活きます。

逆に、「1人でやる」「予約の枠が月に何枠でも埋まっていない」段階での店舗開業は、固定費が先に重くのしかかります。
売上予測の組み立ては 美容室の売上予測の立て方(セット面×回転×客単価) で、席数と回転の数字に落として確認できます。

シェアサロンと店舗開業、融資と手続きの違い

お金以外にも、違いがあります。

融資のしやすさ。
シェアサロンは初期費用が小さいので、自己資金でスタートできる方も多いです。借入が少ないぶん、創業融資の審査を通す必要も小さい。ただし、運転資金を借りておく、という使い方はあります。
店舗開業は、設備資金が大きくなるので、創業融資の利用がほぼ前提です。創業計画書の売上予測に、根拠の数字が求められます。シェアサロンで1年運営した売上台帳は、そのまま根拠になります。

許認可。
店舗を自分で開く場合は、保健所への美容所の開設届と、施設の確認検査が必要です。シェアサロンは、すでに美容所として登録された場所を使うのが基本です。借りる場所が登録されているかは、契約前に必ず確認してください。アイリストの方も、美容師免許があれば同じです。
物件の契約と、融資申請の順番については 創業融資と物件契約のタイミング に書きました。

契約の注意。
シェアサロンは、利用料の計算方法、契約期間と自動更新、途中解約の違約金、歩合の対象(技術売上だけか、店販も含むか)を、契約前に確認してください。固定費が低いぶん、契約条件の違いがそのまま手残りに響きます。

迷っている人の判断の3基準

ここまでを、3つの質問に絞ります。

  1. 月商を、いまの1.5倍以上に伸ばす具体的な計画があるか。席を増やす、スタッフを入れる、客単価を上げる、など、数字と手順で説明できること。
  2. 自己資金が、必要資金の3分の1程度に届いているか。届いていなければ、シェアサロンで貯めながら実績を作るほうが、結果的に早く店舗に届きます。
  3. 売上の記録が、12か月分あるか。ないなら、まずシェアサロンや面貸しで記録を作る時間が、店舗開業の準備そのものです。

この3つに「はい」が少ないほど、先にシェアサロンで始める道が合理的です。
シェアサロンから店舗への二段階は、遠回りではなく、融資の面でも有利な順番です。
自宅サロンという選択肢との比較は 自宅サロンで創業融資は通るのか も参考にしてください。

よくある質問

Q. シェアサロンと店舗開業はどっちが得ですか
A. 1人で施術する間は、シェアサロンが毎月13万円ほど手元に残りやすい計算です。店舗は固定費の差を取り返すため、月に約15万円の売上上乗せ(席数を増やす、スタッフを入れるなど)を描けるときに得になります。
Q. シェアサロンの料金相場はいくらですか
A. 時間制で1時間あたり1,000〜3,000円、月額制で10万〜30万円、月額1〜5万円に売上の20〜40%の歩合を足す型が目安です。立地と設備で変わるので、契約前に歩合の対象や最低保証を確認してください。
Q. シェアサロンで始めてから店舗を開く時、融資に有利ですか
A. 有利に働くことが多いです。シェアサロン期間の月次売上、客数、客単価の記録が、創業計画書の売上予測の根拠になります。記録を12か月分残しておくと、面談でも説明しやすくなります。
Q. シェアサロンでも開業届は必要ですか
A. 自分の屋号で事業として営業するなら、個人事業の開業届を出しておくのが基本です。青色申告を使う場合は、開業から2か月以内に承認申請書の提出も必要です。詳しくは管轄の税務署か、税理士にご確認ください。

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