・まつげエクステは美容行為。施術者には美容師免許が、店舗には美容所開設届と保健所の確認が必要です。
・東京都の構造設備基準「作業室13㎡以上・13㎡なら美容いす6台まで」が、家賃と月商の上限を先に決めます。
・順番は事前相談が先、内装契約が後。逆にすると、やり直しの工事費が計画を壊します。
荻窪駅の北口を出て、青梅街道から一本入ったあたり。雑居ビルの三階に小さな看板が出ています。まつげエクステ、完全予約制。エレベーターを降りると、廊下の突き当たりに白いドアが一つ。
中は静かです。ベッドが二台、カーテンで仕切られ、片方から小さな話し声。目を閉じたお客様の顔の横で、ツイーザーの先だけが細かく動いています。
その一人が終わるまで、その席は空きません。
こんにちは。杉並区で美容業専門の税理士事務所をやっている清水智佳子です。今日は、まつげエクステサロンに必要な美容所開設届の中身と、その基準が資金計画そのものを決めてしまうという話をします。
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よくある質問
- Q. まつげエクステに美容師免許は必要ですか。
- A. 必要です。厚生労働省の「美容師法の概要」に、まつ毛エクステンションも美容行為に含まれると明記されています。店舗も美容所として開設届を出し、保健所の確認が要ります。
- Q. お客様のご自宅へ出張して施術できますか。
- A. 原則できません。出張美容は東京都美容師法施行条例で例外が列挙されており、疾病等で来所が困難な方、婚礼等の儀式の直前、社会福祉施設等の入所者などに限られます。
- Q. シェアサロンや面貸しの場合、開設届は誰が出しますか。
- A. 開設届は施設(美容所)単位です。誰を開設者とするかは事前相談で確定させてください。複数店舗で施術する美容師は、在籍する全店舗の従業者名簿に登載します。
まつげエクステは「美容行為」。ここが出発点
厚生労働省の「美容師法の概要」は、美容について「染毛やまつ毛エクステンションも美容行為に含まれる」と明記しています。まつエクは法律上まぎれもなく美容。施術する人には美容師免許が要り、店舗は美容所として保健所に開設届を出し、確認を受けなければ営業できません。
自治体の案内も同じです。豊島区は「まつ毛エクステンションは美容行為です。美容所として専用の構造設備基準を満たしたうえで開設届を保健所へ提出して確認を受けなければなりません」と説明しています。ネイルサロンのような「届出不要」の世界ではない、ということ。
東京都の構造設備基準は具体的です。作業室は1室13㎡以上、13㎡なら美容いすは6台まで。それを超える場合は1台増ごとに3㎡を追加。床と腰板は不浸透性の材料。洗場には流水装置。採光・照明・換気は十分に(作業面100ルクス以上、炭酸ガス濃度0.5%以下)。消毒設備を備え、消毒済みと未消毒の器具は容器を分ける。ふた付きの汚物箱と毛髪箱も要ります。美容師が常時2人以上なら、管理美容師(美容師歴3年以上かつ知事指定の講習会修了)が必要です。
13㎡と6台が、家賃と月商の上限を先に決める
まつエクの計画づくりで一番大事なところです。13㎡はおよそ4坪。杉並区の店舗賃料は1階が平均23,867円/坪、2階以上が平均20,601円/坪(店舗相場TOWN、2026年8月1日現在)ですから、作業室部分だけで月に9万円前後。実際には受付や待合が乗るので、これは下限の目安にすぎません。1階と2階以上の差は約14%と小さく、杉並区では「2階に上がれば家賃が大きく浮く」とは言いにくい点にも注意を。
そして席数。まつエクは1席あたりの施術時間が長く、回転が効きにくい仕事です。席数×1日に回せる人数×単価×営業日数、この掛け算で月商の天井が決まります。物件の広さが席数を決め、席数が売上の上限を決める。この順番です。逆算せずに書いた「月商○○万円」は、面談でまず崩れます。設備の内訳は美容室の開業資金の内訳も参考に。
創業融資の進め方。着金・工事・検査・オープンの逆算
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、限度額7,200万円(うち運転4,800万円)、返済は設備20年・運転10年以内、据置5年以内。税務申告を2期終えていない創業期は、原則として無担保・無保証人です。金利は2026年8月3日現在、無担保で基準利率が年3.55〜5.25%。新規開業者は「創業支援貸付利率特例制度」で0.65%引き下げ。特別利率のケースには「女性」「35歳未満・55歳以上」「認定特定創業支援等事業の証明書を取得した方」があります。
杉並区の創業支援資金は限度額2,000万円、本人負担利率0.20%、運転7年・設備9年(据置1年以内)。ただし融資申込額以上の自己資金等が必要です。申込から着金までは、公庫のQ&Aで「平均的には3週間程度」。
逆算の順番はこうです。保健所への事前相談、内装の設計と相見積、融資の申込、着金、工事、開設届(営業開始1週間前まで)、施設検査、確認、開店。工事の着手金や物件の初期費用は着金より先に来ることが多いので、どこを自己資金でつなぐかを先に決めてください。全体像は杉並区でサロンを開業する場合の全体像にまとめています。
審査の前に整えること
① 売上根拠を席数から積み上げる
公庫は「創業計画書セルフチェックリスト」(15項目)を公開しています。競合・市場・立地の調査、見積の妥当性、売上・原価の計算根拠、利益から返済できるか。まつエクで一番突かれるのは売上根拠です。席数と施術時間から出した上限を超えない数字にすること。上限の内側で返済できる計画のほうが、大きく見せた計画より説明が通ります。
② 内装見積は「基準を満たす前提」で相見積
床や腰板の材質、洗場、換気、消毒設備。基準に沿った仕様でなければ検査で止まります。見積は、事前相談で確認したレイアウトを前提に取ること。安い見積が基準を満たしていなければ、追加工事で結局高くつきます。相見積は審査でも見られる項目です。
③ 自己資金と書類を先にそろえる
自己資金について、現行の制度要件に数値基準はありません。公庫のQ&Aが「創業資金総額に占める自己資金割合は平均で約2割」と説明しているだけです。見られるのは、そのお金がどう貯まったか。通帳の履歴がそのまま説明になります。あわせて、美容師免許証、結核及び伝染性皮膚疾患に関する健康診断書(発行後3か月以内)、美容師が2人以上なら管理美容師講習会修了証書。健康診断書は期限があるので、取る時期にも注意を。
届出とスケジュール。杉並保健所と区の窓口
窓口は杉並保健所 生活衛生課 環境衛生担当(荻窪5-20-1、03-3391-1991)。手数料は24,000円、営業開始の1週間前までに申請します。区は「レイアウトが決まった時点でご相談ください」と案内。流れは、事前相談、届出、施設検査、確認、開店。必要書類は開設届、構造設備の概要書(平面図)、美容師免許証(原本提示)、健康診断書、該当すれば管理美容師講習会修了証書など。個別のレイアウトが基準を満たすかは、最終的に保健所の判断によります。図面ができたら早めに持ち込んでください。
税務の初動も忘れずに。開業届は事業を始めた年分の確定申告期限までに出せば実務上は受理されます(所得税法の条文は1か月以内)。青色申告承認申請書は、1月16日以後の開業なら開業日から2か月以内。個人事業の美容業は健康保険・厚生年金の非適用業種ですが、スタッフを雇えば労働保険は必要です。
区の制度も早めに。特定創業支援等事業は、区の創業相談等を4回以上、原則1か月以上受けると証明書が交付されます。登録免許税が半額、創業関連保証が開業2か月前から6か月前に前倒し、公庫の貸付利率引下げの対象、東京都の創業融資で金利0.4%優遇、区の創業支援資金の信用保証料3分の1補助。窓口は杉並区産業振興センター 就労・経営支援係(03-5347-9077)、交付まで約1週間。杉並区の創業スタートアップ助成事業は家賃助成が上限30万円(月5万円×6か月・助成率3分の2)またはHP作成助成が上限20万円、第2回の申込期間は令和8年10月1日から11月30日で、創業後6か月以内と商店会加盟が要件です。小規模事業者持続化補助金の創業型第4回は上限200万円・補助率3分の2、創業後1年以内が対象、受付は2026年11月5日から12月15日。こちらも特定創業支援等事業の証明が必要です。
杉並区でまつげエクステサロンを開くあなたへ、当事務所ができること
当事務所は杉並区の美容業専門。日本政策金融公庫の担当窓口と連携し、申請前の段階から計画づくりをサポートしています。
報酬は完全成功報酬制。融資が実行されなければ費用はいただきません。だからこそ、見込みが厳しい場合は最初のご相談で正直にお伝えし、何を整えれば良いかまでご説明します。サービスの詳細はこちら、私のプロフィールはこちらにまとめています。
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